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トリニータ戦術を研究④ まとめ

こんにちは。ここ1週間ちょっとでトリニータのことについて書いてきました。上手く伝わった部分、伝わらなかった部分あると思いますし、さらには自分の戦術理解度、知識がまだまだであることを改めて感じています。そして戦術について書くとき最初に、基本戦術をまずを挙げてそこから説明、話の派生を作るべきだったかと感じています。ということで、基本戦術を最後に振り返って終わりにしたいと思います。

まず私が今回全部の研究で言及したのはわずか6点だけです。勘違いしてほしくないのは、それらがトリニータの全てを語れているわけではありません。僅かほんの少しの部分と言っていいです。自分の未熟さを自覚しながら、自分なりにチャレンジしました。他にもゴールキーパーの事だったり、各選手の特徴も踏まえながらどのような選手を、どのポジションで使っているのかなども述べるべきです。それはまた次の機会に説明できればと思っています。

 トリニータの基本戦術

攻撃

①ボールを保持し試合の主導権を握る。

②GKもビルドアップに参加し、ショートパス主体で攻める。

③相手がハイプレスの場合、数本のワンタッチパスで崩し擬似カウンターか、裏へのロングパス

④3CBの両脇も積極的に攻撃参加

⑤基本的にWBが幅を取り、そこにはドリブルで相手を剥がせるプレーヤーを置く

⑥2シャドーワントップは、適切なポジションで攻撃に絡む

ボランチ2枚は積極的にボールに触りゲームメイクをする

⑧ボールを奪ったらまずはカウンターを目指す、ダメなら遅攻。

 

守備

①5-4-1に可変し、ブロックを作る。

②ボールを奪われたら、そこからプレッシング、まずはカウンターを阻止。

③ボールを奪われたとき相手のビルドアップがセットされていなかったら、ボールを奪いに行く。

④ブロックを敷きリトリートするだけでなく、相手、状況によっては人にマークをつきボールを奪いに行く。

⑤1トップは相手ビルドアップ時、ボランチのパスコースを消す。

 

簡単にまとめるとこのようになりました。トリニータJリーグ6試合終えて4勝2敗です。出来過ぎと言ってもいいくらいです。しかし二敗した相手、松本山雅、広島は守備的なチームです。J1に残留するにはJ1チームの組織されたブロック守備➕個の力のディフェンスをどのように崩すかでしょう。J2の守備とはもちろんレベルが違います。もし先制されてしまったら逆転はかなり難しいチャレンジになります。そのようなチームには先制されないことが何より大事です。そしてそのブロック守備に対して執着してボールを横に動かす必要があります。相手が前からプレッシングでくるようならば.J1チームだろうと通用します。それは結果に示されていますし、ある程度は心配いりません。しかし去年の長崎も序盤は調子が良かったのに降格など、何が起こるかはその時になってみないとわかりません。油断はできませんし、危機感を持っていいぐらいだと私は思ってます。とはいえこれからのトリニータの戦いにはとても楽しみです。

トリニータファンとしてはJ1に残留、定着できればこれ以上の幸せはありません。特に2008年のトリニータを知っているものとしては。そこから激動の10年でした。良くない出来事の方が多かったと思います。そんな中での片野坂監督就任でした。守備的サッカーが多かった今までのトリニータで、まさかこのような美しいサッカーをする時が来るとは思ってませんでした。トリニータファンは片野坂監督に本当に感謝しているはずです。またJ1で戦う経験を得ることができたので。

しかし始まりがあればいつか終わりがあるように、片野坂監督体制の終わりもいつかはあります。それがいつになるかはわかりませんが、J1の強豪が片野坂監督をそのままにして置くわけがありません。その覚悟は私はできていますが、心配はその後にあります。クラブの方針です。ここまで片野坂監督が積み上げてきてくれたのに、新しい監督で全く違うサッカーになる。そうではなくそのサッカーを引き継ぎより発展して欲しいと私は願っています。要するにそのクラブチームのプレー哲学です。バルサのパスサッカーだったり、鹿島の4-4-2、クラブの基盤となるプレー哲学です。彼らは監督が変わろうと"ぶれない"何かがあります。それがあるから安定した結果が出せます。そうなれと言ってるのではなく、これはあくまでも私の願いです。しかし片野坂監督が積み上げてきたサッカーを、次の監督が来た時に全てを打ち壊すにはあまりに惜しすぎます。本当に綺麗なサッカーをしているからです。ペップがバイエルンで築き上げたフットボールの遺産は今のバイエルンではあまり見られないように、将来トリニータがそうなってしまうことが、自分としては惜しいということです。しょうがないことでもありますが。これはまだ先の話ですが、もしそのような時が迫った時、片野坂監督の思想を引き継いでくれる人になってくれればと思います。そしてプレースタイルが定着し哲学になれば、もちろん下部組織のためにもなります。その標準に合わせた選手を育てたり、もちろん補強もしやすくなるのではと感じています。監督が変わり戦術の細部が変わろうと「プレー原則」は変わらない。選手の戦術理解度は高く、新しい大きな変化に対応する必要もない。私はその時が来た時のトリニータのリアクションを、見つめたいと思います。全く違うタイプの監督を連れてくるのが悪いと言っているわけではありません。何度も言いますが私の願いです。今は片野坂監督サッカーを存分に楽しもうと思います。

もちろん世界中探しても確かなプレー哲学を持っているチームは多くありません。ごく僅かですし、その方針が成功するとも限りません。本当に難しいことです。ですからこのわたしの理想は聞き流してもらって大丈夫ですが、いつかそんなトリニータになることを私は願っています。そしてトリニータがもっともっと大きなクラブになっていってほしいです。終

 

 

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興味ある方は@shun14_luckyで調べれば、SHUNという名前が出てきます。これからも記事は書いていくつもりなので、よろしくお願いします。最後は戦術というよりトリニータのことについて書いてしまいました🙇‍♂️

 

研究①

https://trinitaoita.hatenablog.com/entry/2019/04/02/154746

研究②

https://trinitaoita.hatenablog.com/entry/2019/04/04/172553

研究③

https://trinitaoita.hatenablog.com/entry/2019/04/09/195733

 

 

トリニータの戦術を研究③

こんにちは。今日はトリニータの戦術を研究③を書いていきます。

 

⑤得点源の2シャドーワントップ。

昨シーズンのトリニータは、藤本選手、馬場選手、三平選手、後藤選手の4選手が二桁得点を挙げるなど、トリニータは昨シーズンJ2の中で最多得点チームになりました。その理由として前回研究②で、トリニータの武器であるサイド攻撃だと述べました。サイドでクロスを上げる時に2シャドーワントップの3枚が、ゴール前にいることが多いです。また、相手の前線からのハイプレッシャーを逆手に取り、DFラインの裏にボールを送りまるでカウンターのようにいくつものゴールを決めました。

そしてDF.MF.WBからこの3枚(2シャドーワントップ)に縦パス、斜めのパスが入った時は攻撃のスイッチになり一気に攻撃のギアが上がります。5レーン理論から言って前線の3枚は一つずつ横のレーンにいることが多く、距離感がとても良いです。この3枚の選手に縦パスが入るときも距離感がとても良いのでこの3枚の連携で崩すことができます。例えばWBから斜めにグランダーの早いパスが通った時、シャドーの選手がスルーをしてそのまま裏に走り込み、ワントップの選手が裏にボールを送り込みます。f:id:trinitaoita:20190406092934p:imagef:id:trinitaoita:20190406092938p:image

ポイントとしてこの斜めのパスがワントップとシャドーの両方の選手が反応できるような斜めのパスを送ることそしてワントップ、シャドーの選手はどちらも反応できるような適切なポジションを取っておく必要があります。このように綺麗に崩したり、ワントップの選手にパスが入った時2シャドーの選手が近くに寄り密集を作り、押し込んで無理やりゴールをこじ開けたりします。さらにはこの3枚に縦パスが入ることによってDFの集中は中に向けられます。そこでもう一度フリーになったWBにパスを送りクロスからのシュートでゴールをゲットします。とにかく前線の3枚にパスが入った時はチーム全体として攻撃のギアが上がるイメージがあります。

そしてそこからの攻撃の仕方、パターンは豊富です。前線の3枚の連携も良いためたくさんの攻撃パターンがあります。ワントップ2シャドーの選手にパスを送るまでのビルドアップの構築の仕方、(研究①.②)パスが送られてからの仕留め方、攻撃の終わり方この一連の動きが綺麗にまとまっているのでここまでの得点力を発揮できたのだと思います。必ず前線の3枚はフィニッシュの場面に絡んできます。しかも適切な位置、距離関係で(5レーン理論)。これらの理由が、トリニータの爆発的な得点力を生んだと私は考えています。

 

⑥守備、カウンター

トリニータの守備について説明できるところまで説明しようと思います。昨シーズントリニータはボールを奪われた瞬間(ネガティブトランジション)のとき、ボールを取り返しに行く守備というよりはゴールを守る、カウンターを防ぐというのを最優先にしていました。全選手が自陣に帰るということです。もちろんコーナー付近などで押し込んでいてボールを奪われた時は、ボールを取り返す守備を見せています。しかし基本的にはボールを奪われたら、自陣に戻り一度ブロックを形成します。そこからの守備ですが3-4-2-1の時は守備時5-4-1に変化します。WBが最終ラインに組み込まれ2シャドーがボランチ横のスペースを消す形で降りてきます。f:id:trinitaoita:20190406100604p:image

またトリニータは5-3-2(3-5-2)を使う試合もあるのですが、その時は5-3-2で守ります。相手にもよりますが、相手のビルドアップも前線からチェックするというよりは、ゴールを守るために全員がボールより下がり、ブロックを敷きます。まとめてみます。

 

守備時(5-4-1に変化) 基本はゾーンディフェンス

ネガティブトランジション

・相手のカウンターを防ぐ

・自陣に戻る

・相手の自陣深くでボールを奪われたら、素早くプレス開始

相手のビルドアップ

・まずはゴールを守る。

・パスコースを制限して外で回させる

・ブロックを作り自分たちの外でボールを回させる

押し込まれた時

・押し込まれた時も同様にゾーンディフェンスで5-4のブロックを作り我慢強く守備

ボールを奪ったら

・まずはカウンターを狙う

・ダメなら遅攻に切り替える

 

自分の中ではこのようにまとめることができました。ブロックを敷き、スペースを消した守備をしますので、創造性に欠けるチームは少し攻略が難しくなります。しかし守備強度、スライド、コンパクトは高い方ではないのでそこは一つトリニータの課題と言えます。それでも対札幌戦で、5-4-1のブロックを敷き1失点で抑え勝利しました。守備時は全員がハードワークします。

しかし今シーズンのトリニータの守備は前年と比べると、より積極的なものになっていると感じます。ボールを奪いに行く、ロングボールを蹴らせる守備が多くなっているように思います。今シーズンの開幕3試合は諸事情でまだ見れてないのですが対マリノス戦(5-3-2)、対広島戦は積極的にチームとしてボールを奪いに行くシーンがありました。ピッチを3分割にしたときの自分たちのアタッキングゾーン(相手のディフェンシブゾーン)でも強度の高いプレスをかけました。さらにミドルゾーンでも純粋なゾーンディフェンスというより、ゾーンの中でのマンマークを意識していました。トリニータのCBも降りて行くFWをボランチに渡すというより付いて行くような守備でした。相手により圧力を与えていました。ブロックを敷くよりも前からプレスをかけ自由を奪う方が良いと考えたのではないでしょうか。逆に先日の札幌戦では5-4-1のブロックを敷き札幌の攻撃を一点で抑えました。守備もチームによって使い分けていることがわかります。

次にトリニータがボールを奪ったときについてです。トリニータがボールを奪ったらまずはカウンターを目指します。実はトリニータはカウンターも得意としています。ボールを奪ったらまずはゴールを目指し、チャンスとみればカウンターを仕掛けゴール前で数的優位を作ります。横浜戦の先制点はミドルゾーンでボールを奪い、一気にショートカウンターで仕留めています。その場面もゴール前で数的優位を作れています。もしカウンターができないと判断したら遅攻に切り替え、攻撃を再構築します。

守備は相手チームによって使い分け、ボールを奪取した後は点を取る確率の高いカウンターをまずは狙います。守備もどちらかと言えばブロックを敷く方、ゴールを守ることに重点を置いていて、ハイラインでプレスをかけ、裏を取られるというリスクを減らして、ゴール前のスペースを消しています。

J1に挑戦して今のところは複数得点をあげていますし、複数失点はしていません。しかし2点以上あげた試合はありません。だからこそより守備力が重要になってきます。もし試合中により一対一の場面が増え、個人の力に依存する傾向が強くなる守備になればJ1の強力な選手にやられてしまうかもしれません。これからトリニータの守備がどのように個の強い選手、チームに対応するか楽しみです。

次が最後かもしれません。続きます。

 

研究①

https://trinitaoita.hatenablog.com/entry/2019/04/02/154746

研究②

https://trinitaoita.hatenablog.com/entry/2019/04/04/172553

 

トリニータの戦術を研究②

こんにちは。今日はトリニータの戦術の続きを書きたいと思います。①前回は2シャドーとワントップのスタメンが固定されていないこと、②トリニータのビルドアップについて述べました。今回は③、④を説明したいと思います。

③忠実に再現された5レーン理論のプレー

一度は試合を見たことは分かると思いますが、トリニータのビルドアップ、パス回しはとても安定していますよね。その理由としては②で説明しましたが、もう一つ大きな理由があると私は思っています。みなさんは5レーン理論という言葉をご存知でしょうか?一度は聞いたことがある方もいると思います。

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このようにピッチを横ではなく縦5分割に分け、両サイド大外のレーンをアウトサイドレーンと呼び、5分割のちょうど真ん中をセンターレーンと呼びます。そしてアウトサイドレーンセンターレーンの間にある2つのレーンをハーフスペースと言います。現代サッカーでは、この5レーン理論が点を取るためには欠かせないものになっています。なぜならこの理論は、ポジショナルプレーを実践するときに大きな手助けになるからです。(ポジショナルプレーのことを話すと長くなってしまうので次の機会に)5レーン理論を試合中に実践するには大きなルールが4つあります。

  1. 一列前の選手は、同じレーンに入ってはいけない
  2. 二列前の選手は同じレーンに入る
  3. 一列前の選手は、隣のレーンにいる
  4. 同じレーンに2人以上入らないのが望ましい

画像で説明すると、アンカーのフェルナンジーニョ選手の一列前の選手はシルバ選手、デ・ブライネ選手になります。その2選手はフェルナンジーニョ選手と同じレーンに入らず、ハーフスペースに位置しています。これがルール1です。そして二列前の選手はアグエロ選手ですが、アグエロ選手フェルナンジーニョ選手と同じレーンに位置しています。これがルール2です。そしてシルバ選手デ・ブライネ選手は、センターレーン横のハーフスペースに位置しています。これがルール3です。そしてそれぞれのレーンに選手が2人ずつ入っており、2人以上入っていません。非常にバランスのとれた配置になっています。これがルール4です。そして攻撃時には各レーンに選手が必ずいるのが理想です。

一列前の選手が横のレーンに位置し斜めのパスコースを確保すると同時に、二列前の選手は同じレーンに位置します。要するに三角形(トライアングル)の位置関係になることが想像できるでしょうか?

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トリニータの右サイドで表すとこのようになります。簡単に言うと、この5レーン理論のルールを意識すれば試合中に、トライアングルの関係を適切な距離関係で作ることができると言うことです。さらに選手間の距離感、バランスも非常に良くなります。例えばサイドを崩してクロスを上げるものの、中に誰も人がいないなんてことが起きる可能性も少なくなります。バランスよくポジションを配置しているので、5レーン理論が徹底されていて、各レーンに選手がいれば必ず何人かのプレーヤーがクロスに飛び込めるはずです。そのために、各レーンにプレーヤーがいることが望ましいです。そしてトリニータの選手たちもこの5レーン理論の考えが浸透されているため、ビルドアップに迷いがなくスムーズです。研究①でCBの岩田選手、福森選手がビルドアップ時にSBのような位置付けになりますが、あまりワイドに取らないと述べましたが、これが理由です。松本選手、星選手(今年で言うと高山選手)岩田選手、福森選手の一列前の選手になるのですが、彼らはアウトサイドレーンに位置しています。そのために岩田選手、福森選手はワイドに取らず、ハーフスペースに位置し、アウトサイドレーンへの斜めのパスコースを確保します。単純な縦パスを受ける時は背中を後ろに向けてしまいますが、斜めのパスは体を半開きにし、視野を確保できます。だからトライアングルの関係が重要です。視野を確保できればボールを奪われるリスクも減るはずです。

しかし岩田選手、福森選手はずっとハーフスペースで、WBの選手はずっとアウトサイドレーンでプレーしないといけないわけではありません。5レーン理論というのはプレー原則」です。対戦相手がブロックを敷いて守備をしてきたときに、トリニータはより攻撃的になる必要があります。人数をより多くして攻撃するのですがそのとき岩田選手、福森選手も攻撃参加します。今シーズンのホームでの対広島戦でもよく見られたのですが岩田選手、福森選手が前目のポジションをとり尚且つアウトサイドレーンに位置します。すると高山選手、松本選手はスルスルっとハーフスペースに移動します。そして岩田選手、福森選手がいたハーフスペースの位置にボランチ前田選手、ティティパン選手が降りてくるか、鈴木選手がハーフスペースに移動します。この状況だと、ボランチの選手の一列前が岩田選手、福森選手になり二列前の選手が高山選手、松本選手になるわけです。

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ですので、プレーするときに誰がどのレーンでプレーするのかが必ずしも決まっているわけではありません。自分にとって一列前の選手と一列後ろの選手がどのレーンでプレーしてるのかによってポジションがある程度決まります。そのため選手が流動的に動いて、ポジションが変わっても全員が変わらぬサッカーをできるのではないでしょうか。そしてトライアングルの関係性を試合中に距離感よく作れているからこそ、敵のプレッシャーラインを超え前線に良い状態でボールを送ることができるのだと思います。ボールを保持して攻撃したい時は、トライアングルの関係性は必要になってきます。何より片野坂監督体制四年前です。監督の考えもかなり浸透されていると感じます。スタメンの岩田選手、鈴木選手、福森選手、松本選手やシャドーの後藤選手、CFの伊佐選手などは片野坂監督体制1年目からプレーしてます。④ではさらに5レーン理論のメリットを紹介します。

 

④位置的優位、数的優位、質的優位(攻撃の鍵はサイド)

この3つはポジショナルプレーの原則となるものです。そしてこの原則は5レーン理論と密接に関わっています。

  1. 位置的優位

③の冒頭で5レーン理論が点を取るために重要になると述べました。その1つの理由が位置的優位です。これは特にハーフスペースに入り込みボールを受けようとするとき位置的優位が発生します。

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この画像のようにハーフスペースに入り込みボールを受けます。青の矢印がボールの動きで、赤の矢印がDFの動きです。ハーフスペースに位置すれば、ボールを触らなくとも相手選手は嫌がるはずです。なぜならどの選手がマークにつくか迷いが生じるからです。もし8番がパスコースを消しに行きスライドしたら、次はワントップへの縦パスのコースが空いてしまいます。赤の7番、6番がスライドで対応はできますがかなりきつい仕事になりますね。

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次に赤のSB5番がマークしに行くとどうなるでしょうか?自分の守備ゾーンを空けてしまい、サイドに広大なスペースができてしまいます。そこのスペースを有効に使われてしまいます。

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最後に赤のCB4番がマークしに行くとどうなるでしょうか?最終ラインが3枚になり、残りの3枚はカバーリングをする必要があります。もしカバーしなければ、4番が飛び出したギャップのスペースを使われてしまいます。

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このようにハーフスペースに位置することによって、相手を意図的に動かすことができます。トリニータで言うと、2シャドーはハーフスペースによく入り込みます。CFは最終ラインを引っ張り、相手のDFラインとMFラインのライン間を広げます。こうすることによって2シャドーは、ボールが入った時のスペースを確保でき前を向けます。そこで前を向ければ一気にビックチャンスです。DFは何らかの対応を迫られます。ミドルも打てますし、スルーパスも出せます。だから、ビルドアップのときにハーフスペースに位置し、後方から斜めでスパンと強い縦パスが入り前を向けた時は、点を取るチャンスがぐっと上がります。もしCFが降りてきた場合は2シャドーのどちらかが裏を狙いDFラインを押し下げます。

 2.数的優位

数的優位は研究①で述べた通り、トリニータはビルドアップ時に近い距離でGKも含めビルドアップをします。そしてボランチが一枚降りてくるなどしてビルドアップ時に数的優位を作ります。決して数的不利の状況で後方のビルドアップはしません。もし後方で数的不利の状況になっていたらそれは、前方で数的優位になっている可能性があるので、トリニータの選手たちは前線にボールを送るでしょう。攻撃する時、ボールを持っている時は数的優位を作るのが絶対条件であり、数的優位ができているところで攻撃をします。

 3.質的優位

質的優位とは個の能力で相手を上回ることです。シティで例を出すとスターリング選手、レロイ・サネ選手です。彼らはとにかく速く一対一に滅法強いです。ペップは戦術の役割は彼らに良い状態でボールを届けて終わりだと言っていたらしいです。良い状況でボールが彼らに渡ればかなりの確率でチャンスに繋がります。トリニータの選手の場合は松本選手、高山選手、星選手、小林選手あたりになってくると思います。彼らはアウトサイドレーンでプレーしているのですがドリブル、スピードに特徴を持った選手です。私は彼らがトリニータの攻撃の鍵を握っていると思っています。パス回しだけでは、ブロックを敷いた守備を崩すのは限界があります。しかしドリブラーがいれば局面を打開することができるし、変化をつけることができます。ではどのようにトリニータはどのように質的優位の状況を作り出しているのでしょうか?答えはアイソレーション(孤立)です。これはバスケでよく使われる言葉です。わざと一対一の局面を作り出し、そこで一対一に勝ちチャンスを作ることです。このアイソレーションはアウトサイドレーンで使います。一方のサイドで密集を作り一気に逆サイドに展開します。そこで一対一の状況から勝負するわけです。そこからさらにパスで崩すようでは時間がかかってしまいますが、一対一の勝負に勝ちゴール前でクロスを上げるのはかなりのチャンスになります。完全にパスで崩しきる必要もないです。そして彼らに必要なのは味方が近くに寄ってヘルプするよりも、スペースが必要です。彼らがアウトサイドレーンで良い状況でボールを受けた時は、個の力を存分に発揮させるため同じレーンには入りません。なぜなら近くに寄ることで、マークを引き連れてきてしまい、スペースが無くなってしまうからです。その時のアウトサイドレーンは彼らにとって神聖な場所みたいなものです。決して邪魔してはいけません。良い状況でパスを受けた時とは具体的に言えば、ピッチを3分割にしたときの1番奥、アタッキングゾーンで前を向いてボールを受けたときです。マリノス戦のデータなのですが、90分を通して左サイドで31%、中央で25%、右サイドで44%の割合で攻めています。右サイドで攻撃する傾向が強いですね。この試合で松本選手は6本のクロスを送り、2本成功(1アシスト)です。さらに松本選手をアンダーラップで追い越し岩田選手が3本クロスを送り、2本成功(1アシスト)しています。右サイドは、CBの岩田選手が積極的な上がりを見せます。松本選手を外側から追い越すのではなく、内側(アンダーラップ)から追い越し、ペナルティーエリアのポケットの位置でボールをもらいます。特に右サイドは驚異的です。

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(黄色が岩田選手の動き、赤がポケットゾーン、青がボールの動き)相手SBを引き出すことに成功すればそのSBとCBの間できたスペースに岩田選手が猛スピードで走りクロスを上げます。

そしてクロスを上げる時は必ずゴール前に2.3枚、多い時は4枚クロスを待っているので、サイド攻撃が鍵だと選手は理解しているのがわかります。そしてマリノス戦では2本のクロスから点を挙げています。サイド攻撃はトリニータの大きな武器です。

これは完全な私の意見ですが、片野坂監督体制になって松本怜選手が1番選手として伸びたと思っています。(上からですみません)その理由として彼に無理難題なタスクをこなさせるのではなく、彼が1番得意としてる場所でプレーさせているからでしょう。彼にゲームメイクをしろと指示しても到底無理です。彼には彼の個性があり片野坂監督は彼の個性を理解してるからこそ、WBで起用しています。そしてクロス精度も年々向上しています。スピード系のクロスをキーパーとDFラインの間に正確に送ることができ、何度もチャンスを作っています。松本選手が怪我などで出場できないとなると、正直怖いです。トリニータでは代えのきかない選手です。こうして位置的優位、数的優位、質的優位トリニータの攻撃には欠かせないものだと私は考えています。この3つの優位をトリニータが作ることができるので、チームとして優れた得点力を持っているのだと思います。

今回は③忠実に再現された5レーン理論.④位置的優位、数的優位、質的優位(サイド攻撃が鍵)の2つについて述べました。自分で文章を考え、説明することが如何に難しいかを痛感しています。決して最高なまとめではないですし、ミスというかうまく伝わらないことの方が多いと思います。しかし自分で挑戦してみたかったことなので、最後までお付き合いしてくれると嬉しいです。次回で終わりか、あと2回になると思います。

 

https://trinitaoita.hatenablog.com/entry/2019/04/02/154746 

↑研究①です。

 

 

 

 

 

 

トリニータの戦術を研究①

こんにちは。関東に住んでいる大分出身のトリニータファンの者です。今、日本のジェイミー・ヴァーディと話題の藤本選手や、浅田飴との関係など何かと話題な大分トリニータですが!!!1番注目すべきなのは片野坂監督の戦術だと僕は強く感じています!6年ぶりにJ1に昇格しJ1の中では最小規模の資金力の中で鹿島、磐田、横浜に勝利しました。さらに片野坂監督就任時はJ3からのスタートです。1年でJ3優勝を導き、2年でJ1昇格を果たしたその手腕は半端ではありません!日本サッカー協会からもオファーがあったと言われている監督の戦術を研究しないわけにはいかない!と思い、素人ながら片野坂監督のサッカーをまとめてみました。未完成な部分もあると思いますが、最後までお付き合いしてくださると嬉しいです。

 

まずはフォーメーションからおさらいしてみましょう。

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J3で戦った就任1年目は中盤フラットの4-4-2で戦いましたが、2年目からは多くの試合で3-6-1(3-4-2-1)を採用しました。写真はJ1昇格を果たした昨シーズンのフォーメーションとレギュラーメンバーです。前線の3枚に名前を書いていないので、おかしいと思った方もいるのでないでしょうか。ここが片野坂監督サッカーの強さその①です!

①良い意味で前線のレギュラーは決まっていない!

片野坂監督は3-4-2-1の2-1にあたるシャドーとワントップの選手をあまり固定させません。各チームそれぞれDFにも戦術がありますが、18チームあれば18チーム全て完璧に同じDFの方法を取ってくるチームはありません。例えば前線から激しくプレッシングをかけるチームは、必然的に最終ラインは高くなります。去年のJ2のチームで言うとジェフ千葉町田ゼルビアです。そのようなチームと戦う時は身体能力が高く、スピードもありロングボールを回収できる伊佐選手がワントップとして試合に出ることが多かったです。(必ずしもスタメンではありません。DFが疲れた後半から出場して伊佐選手の、持ち味を発揮することも多かったです。)ポストプレーが得意な林選手もこのような試合で活きました。逆に強固なブロックを敷いて守備に重点を置くチームを攻略するときに必要になるのは、創造性(クリエイティビティ)だったり、シュートに持ち込む最後のラストパスの精度です。(もちろん点を取る最後の局面で伊佐選手の身体能力も必要です。)ラストパスが出せる選手がいても、そのレシーバーになる選手がいないと得点はできません。その受け手になるのが藤本選手です。昨シーズンで言うと、松本山雅FCとのホームでの首位決戦の試合は藤本選手はスタメンで起用されています。松本山雅FC反町監督のもとかなり強固なブロックを敷いてきます。

このようにワントップは相手チームの守り方によって選手を選んでるイメージがあります。

次に2シャドーですが、昨シーズン主に起用されたのは馬場選手、三平選手、後藤選手、小手川選手、清本選手、國分選手でした。(三平選手はワントップで出場することもありました。)これにCFタイプの藤本選手、伊佐選手、林選手をいれて前線の3枚はこの9選手の中から選ばれていたということです。とにかく引き出しが多いです。笑 対戦相手もこの9枚から3枚のスタメン選手を予想するのは容易では無かったはずです。昨シーズンのスタメンを振り返ると、必ず2シャドーのどちらかはリンクマンの選手でした。馬場選手、三平選手、小手川選手、國分選手はこのタイプの選手に当てはまると思います。ボール扱いが上手く、テンポよくボールを捌きます。4選手とも特徴はそれぞれ違いますが、攻撃時のチームの潤滑油となれる選手ですね。特に馬場選手のアウトサイドのスルーパススペシャルです。2シャドーともこのようなタイプの選手で臨むこともありました。そこも相手チームの守り方に依存していたと思います。

シャドーのもう1枚は、後藤選手、清本選手、(三平選手はどちらにも当てはまると思います。)でタイプ分けできると考えました。後藤選手はスピードがあり、シュート精度、パンチ力があり得点力があります。清本選手ドリブラーミドルシュートを得意とする選手です。リンクマンのような選手を軟性の選手とするなら、後藤選手、清本選手、(三平選手)は剛性の選手です。要するにゴリゴリ点を取りに行く、得点力のある選手です。しかし昨シーズンスタメンから剛性のタイプ2枚をシャドーに並べることはありませんでした。それはアタッキングゾーンでウイングバックに良い状態でボールが入らない、攻撃の質が下がると考えたのでは、というのが私の推測です。彼らのような、個の力のある選手を十分に活かしますが、決して彼らの能力に(剛性の選手)に依存するわけではないという事ではないのでしょうか。チームとして点を取りに行くということを大事にしたんだと感じます。

片野坂監督は相手によって1トップ2シャドーの選手を変えていました。前の試合で点を取った選手が次の試合ベンチ外なんてこともありました。前線の3枚は様々な組み合わせがあり、違う組み合わせのたびに違う攻撃の味を出していました。そしてその試合で1番威力を発揮できる3枚を選んでいました。そのため前線の3枚は固定しませんでしたが、誰が出ても点が取れるそれがトリニータの強みになりました。

②特徴的なビルドアップ(ポゼッションが目的化されていない)

トリニータは、ボールを保持しているときはGK含めショートパスでのビルドアップをします。今やどのチームもショートパスでのビルドアップをする選択肢を持っています。ショートパスのビルドアップでイメージする配置は、CB2枚が開きその間にボランチが1枚降りてきて、SBは高い位置を取るというものではないでしょうか。今の日本代表もCBがワイドに開きSBが高い位置を取り、サイドのプレーヤーが中に絞るような位置どりをします。これがよくあるポゼッションしながらビルドアップするときの配置です。

しかしトリニータのポゼッションしながらのビルドアップ時の配置は少しユニークなものです。3バックの間にボランチが1枚降りてきて、4-1-4-1のように可変フォーメーションになります。

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代表的な例としてペップシティは4-1-2-3(4-1-4-1)でスタートしますが、ボール保持時は全く違うフォーメーションでサッカーをします。4-1-4-1から攻撃時に可変フォーメーションになるのですが、トリニータは3-4-2-1から攻撃時は4-1-4-1に変化するわけです。基本的にWBが大外のレーンに位置し幅を持たせます。ボランチが1枚降りてくることによって両脇のCB岩田選手福森選手がSBのような位置付けになります。ここで1つキーになるのは、岩田選手福森選手はあまりワイドに取らず横のCBもしくは降りてきたボランチと距離を近くとります。(次の機会にこれについては説明するつもりです。)

4枚が近い距離を保ち、GK高木選手を使いビルドアップを丁寧に行います。それに降りてこない方のボランチが彼らの前を動き回りパスコースを作り、WBは大外でボールをもらいます(松本選手・星選手) こうして7枚の選手がビルドアップに関わります。残りのシャドー2枚とワントップは、良い状況でパスを受ける準備をします。相手が前がかりでプレスをかけてきたとき、素早くワンタッチでグランダーのパスをシャドーに送り、一気に局面を打開することもあります。ボールを奪ったわけではないですが、まるでカウンターを仕掛けるような状況になります。

話は戻りますが、CB3枚とボランチ1枚が近い距離感ですので、CB2枚がワイドに開きボランチが1枚降りてくるよりも、リスクを軽減できボールを奪われても対応しやすいはずです。

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この画像は、トリニータがビルドアップ時によくとるポジションです。GK高木選手がCBの位置まであがり、CBの役割をこなします。前線から激しいプレッシングを受けたときに、このようにポジションをとる傾向が強く、ボランチが降りてこない分中盤の枚数が増え数的優位を保つことができます。4-2-4-1のような形になるので、対戦相手はボールを奪うのが難しくなります。ボランチへのパスコースが1つ増えるわけですから、優位に立つことができます。

(スペインリーグのベティスのキケ・セティエン監督もこのような方法を実践しています。)

しかし彼らの目的は、ポゼッション率を高めることではありません。あくまで、彼らの目的は点を取ることであり、良い状態、状況でアタッキングゾーンにボールを持ち込むことです。そのためのポゼッション、このようなビルドアップを取っているわけです。ポゼッションは点を取るための手段であり、ポゼッション率が高い試合もあれば低い試合もあります。ポゼッション率が低い時は、相手が攻撃的で前線から激しくプレッシングをかけてきた場合です。このようなチームはリスクを負ってボールを奪いに来ます。DFは守備時1枚余らせるのがセオリーですが、ボールを奪うために完全にマンマークで数的同数になる時があります。そのときは迷いなくGK、CBから裏にボールを放り込みます。そのような時に身体能力が高くスピードのある伊佐選手などが活きるわけです。ボールを放り込み1対1に勝ってしまえば一気にビックチャンスですから。

1つデータを挙げてみます。ホームでマリノスと対戦した試合です。今シーズンなので少しメンバーは変わっていますが、GK高木選手がパスを受けてから、ロングパスとショートパスの本数を数えてみました。マリノスはポステコグルー監督のもと、攻撃的なサッカーをするので、この試合でも前線からプレスを仕掛けて来ました。(ロングパスとショートパスの基準ですが、ピッチを三分割したときの三分の一、1番手前のゾーンへのパスはショートパスとして計算し、それ以外はロングパスと計算しました。)私が数えれたなかでは、高木選手40回(ゴールキック含む)キックするチャンスを持ち、ロングパス25回ショートパスは15回でした。マリノスはかなりハイラインだったため、何度かGKからのロングパスでチャンスをつくりました。このように得点する可能性があるなら、ロングキックを蹴ることを厭わずやってきます。さらに福森選手6回ロングパスをDFラインの裏に放り込み、3回成功しています。かなりのビックチャンスに繋がっています。それに恐れて相手チームが1枚余らせて来たり、少しプレスを抑えてきたら、後方から数的優位でビルドアップをして前進することができます。そしてこの試合の支配率はトリニータが、42%ですし、パス数(成功率)もマリノス634本(80%)に比べトリニータ401本(72%)です。トリニータの方が200本以上パス数も少なく、成功率も低いです。積極的にマリノスのDFラインの裏にボールを送り込んだため、成功率も高くないのだと思います。そしてこの試合は2対0で勝利を収めています。

こうして繋ぐこともできる裏に蹴ることもできる、両方の可能性を持っているので相手チームは対応に迫られます。これもトリニータの強みの1つと言って良いでしょう。

と、ここで2つ紹介させてもらいましたが、長くなりすぎるのも嫌なので一度ここで研究①は終了です。