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トリニータの戦術を研究①

こんにちは。関東に住んでいる大分出身のトリニータファンの者です。今、日本のジェイミー・ヴァーディと話題の藤本選手や、浅田飴との関係など何かと話題な大分トリニータですが!!!1番注目すべきなのは片野坂監督の戦術だと僕は強く感じています!6年ぶりにJ1に昇格しJ1の中では最小規模の資金力の中で鹿島、磐田、横浜に勝利しました。さらに片野坂監督就任時はJ3からのスタートです。1年でJ3優勝を導き、2年でJ1昇格を果たしたその手腕は半端ではありません!日本サッカー協会からもオファーがあったと言われている監督の戦術を研究しないわけにはいかない!と思い、素人ながら片野坂監督のサッカーをまとめてみました。未完成な部分もあると思いますが、最後までお付き合いしてくださると嬉しいです。

 

まずはフォーメーションからおさらいしてみましょう。

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J3で戦った就任1年目は中盤フラットの4-4-2で戦いましたが、2年目からは多くの試合で3-6-1(3-4-2-1)を採用しました。写真はJ1昇格を果たした昨シーズンのフォーメーションとレギュラーメンバーです。前線の3枚に名前を書いていないので、おかしいと思った方もいるのでないでしょうか。ここが片野坂監督サッカーの強さその①です!

①良い意味で前線のレギュラーは決まっていない!

片野坂監督は3-4-2-1の2-1にあたるシャドーとワントップの選手をあまり固定させません。各チームそれぞれDFにも戦術がありますが、18チームあれば18チーム全て完璧に同じDFの方法を取ってくるチームはありません。例えば前線から激しくプレッシングをかけるチームは、必然的に最終ラインは高くなります。去年のJ2のチームで言うとジェフ千葉町田ゼルビアです。そのようなチームと戦う時は身体能力が高く、スピードもありロングボールを回収できる伊佐選手がワントップとして試合に出ることが多かったです。(必ずしもスタメンではありません。DFが疲れた後半から出場して伊佐選手の、持ち味を発揮することも多かったです。)ポストプレーが得意な林選手もこのような試合で活きました。逆に強固なブロックを敷いて守備に重点を置くチームを攻略するときに必要になるのは、創造性(クリエイティビティ)だったり、シュートに持ち込む最後のラストパスの精度です。(もちろん点を取る最後の局面で伊佐選手の身体能力も必要です。)ラストパスが出せる選手がいても、そのレシーバーになる選手がいないと得点はできません。その受け手になるのが藤本選手です。昨シーズンで言うと、松本山雅FCとのホームでの首位決戦の試合は藤本選手はスタメンで起用されています。松本山雅FC反町監督のもとかなり強固なブロックを敷いてきます。

このようにワントップは相手チームの守り方によって選手を選んでるイメージがあります。

次に2シャドーですが、昨シーズン主に起用されたのは馬場選手、三平選手、後藤選手、小手川選手、清本選手、國分選手でした。(三平選手はワントップで出場することもありました。)これにCFタイプの藤本選手、伊佐選手、林選手をいれて前線の3枚はこの9選手の中から選ばれていたということです。とにかく引き出しが多いです。笑 対戦相手もこの9枚から3枚のスタメン選手を予想するのは容易では無かったはずです。昨シーズンのスタメンを振り返ると、必ず2シャドーのどちらかはリンクマンの選手でした。馬場選手、三平選手、小手川選手、國分選手はこのタイプの選手に当てはまると思います。ボール扱いが上手く、テンポよくボールを捌きます。4選手とも特徴はそれぞれ違いますが、攻撃時のチームの潤滑油となれる選手ですね。特に馬場選手のアウトサイドのスルーパススペシャルです。2シャドーともこのようなタイプの選手で臨むこともありました。そこも相手チームの守り方に依存していたと思います。

シャドーのもう1枚は、後藤選手、清本選手、(三平選手はどちらにも当てはまると思います。)でタイプ分けできると考えました。後藤選手はスピードがあり、シュート精度、パンチ力があり得点力があります。清本選手ドリブラーミドルシュートを得意とする選手です。リンクマンのような選手を軟性の選手とするなら、後藤選手、清本選手、(三平選手)は剛性の選手です。要するにゴリゴリ点を取りに行く、得点力のある選手です。しかし昨シーズンスタメンから剛性のタイプ2枚をシャドーに並べることはありませんでした。それはアタッキングゾーンでウイングバックに良い状態でボールが入らない、攻撃の質が下がると考えたのでは、というのが私の推測です。彼らのような、個の力のある選手を十分に活かしますが、決して彼らの能力に(剛性の選手)に依存するわけではないという事ではないのでしょうか。チームとして点を取りに行くということを大事にしたんだと感じます。

片野坂監督は相手によって1トップ2シャドーの選手を変えていました。前の試合で点を取った選手が次の試合ベンチ外なんてこともありました。前線の3枚は様々な組み合わせがあり、違う組み合わせのたびに違う攻撃の味を出していました。そしてその試合で1番威力を発揮できる3枚を選んでいました。そのため前線の3枚は固定しませんでしたが、誰が出ても点が取れるそれがトリニータの強みになりました。

②特徴的なビルドアップ(ポゼッションが目的化されていない)

トリニータは、ボールを保持しているときはGK含めショートパスでのビルドアップをします。今やどのチームもショートパスでのビルドアップをする選択肢を持っています。ショートパスのビルドアップでイメージする配置は、CB2枚が開きその間にボランチが1枚降りてきて、SBは高い位置を取るというものではないでしょうか。今の日本代表もCBがワイドに開きSBが高い位置を取り、サイドのプレーヤーが中に絞るような位置どりをします。これがよくあるポゼッションしながらビルドアップするときの配置です。

しかしトリニータのポゼッションしながらのビルドアップ時の配置は少しユニークなものです。3バックの間にボランチが1枚降りてきて、4-1-4-1のように可変フォーメーションになります。

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代表的な例としてペップシティは4-1-2-3(4-1-4-1)でスタートしますが、ボール保持時は全く違うフォーメーションでサッカーをします。4-1-4-1から攻撃時に可変フォーメーションになるのですが、トリニータは3-4-2-1から攻撃時は4-1-4-1に変化するわけです。基本的にWBが大外のレーンに位置し幅を持たせます。ボランチが1枚降りてくることによって両脇のCB岩田選手福森選手がSBのような位置付けになります。ここで1つキーになるのは、岩田選手福森選手はあまりワイドに取らず横のCBもしくは降りてきたボランチと距離を近くとります。(次の機会にこれについては説明するつもりです。)

4枚が近い距離を保ち、GK高木選手を使いビルドアップを丁寧に行います。それに降りてこない方のボランチが彼らの前を動き回りパスコースを作り、WBは大外でボールをもらいます(松本選手・星選手) こうして7枚の選手がビルドアップに関わります。残りのシャドー2枚とワントップは、良い状況でパスを受ける準備をします。相手が前がかりでプレスをかけてきたとき、素早くワンタッチでグランダーのパスをシャドーに送り、一気に局面を打開することもあります。ボールを奪ったわけではないですが、まるでカウンターを仕掛けるような状況になります。

話は戻りますが、CB3枚とボランチ1枚が近い距離感ですので、CB2枚がワイドに開きボランチが1枚降りてくるよりも、リスクを軽減できボールを奪われても対応しやすいはずです。

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この画像は、トリニータがビルドアップ時によくとるポジションです。GK高木選手がCBの位置まであがり、CBの役割をこなします。前線から激しいプレッシングを受けたときに、このようにポジションをとる傾向が強く、ボランチが降りてこない分中盤の枚数が増え数的優位を保つことができます。4-2-4-1のような形になるので、対戦相手はボールを奪うのが難しくなります。ボランチへのパスコースが1つ増えるわけですから、優位に立つことができます。

(スペインリーグのベティスのキケ・セティエン監督もこのような方法を実践しています。)

しかし彼らの目的は、ポゼッション率を高めることではありません。あくまで、彼らの目的は点を取ることであり、良い状態、状況でアタッキングゾーンにボールを持ち込むことです。そのためのポゼッション、このようなビルドアップを取っているわけです。ポゼッションは点を取るための手段であり、ポゼッション率が高い試合もあれば低い試合もあります。ポゼッション率が低い時は、相手が攻撃的で前線から激しくプレッシングをかけてきた場合です。このようなチームはリスクを負ってボールを奪いに来ます。DFは守備時1枚余らせるのがセオリーですが、ボールを奪うために完全にマンマークで数的同数になる時があります。そのときは迷いなくGK、CBから裏にボールを放り込みます。そのような時に身体能力が高くスピードのある伊佐選手などが活きるわけです。ボールを放り込み1対1に勝ってしまえば一気にビックチャンスですから。

1つデータを挙げてみます。ホームでマリノスと対戦した試合です。今シーズンなので少しメンバーは変わっていますが、GK高木選手がパスを受けてから、ロングパスとショートパスの本数を数えてみました。マリノスはポステコグルー監督のもと、攻撃的なサッカーをするので、この試合でも前線からプレスを仕掛けて来ました。(ロングパスとショートパスの基準ですが、ピッチを三分割したときの三分の一、1番手前のゾーンへのパスはショートパスとして計算し、それ以外はロングパスと計算しました。)私が数えれたなかでは、高木選手40回(ゴールキック含む)キックするチャンスを持ち、ロングパス25回ショートパスは15回でした。マリノスはかなりハイラインだったため、何度かGKからのロングパスでチャンスをつくりました。このように得点する可能性があるなら、ロングキックを蹴ることを厭わずやってきます。さらに福森選手6回ロングパスをDFラインの裏に放り込み、3回成功しています。かなりのビックチャンスに繋がっています。それに恐れて相手チームが1枚余らせて来たり、少しプレスを抑えてきたら、後方から数的優位でビルドアップをして前進することができます。そしてこの試合の支配率はトリニータが、42%ですし、パス数(成功率)もマリノス634本(80%)に比べトリニータ401本(72%)です。トリニータの方が200本以上パス数も少なく、成功率も低いです。積極的にマリノスのDFラインの裏にボールを送り込んだため、成功率も高くないのだと思います。そしてこの試合は2対0で勝利を収めています。

こうして繋ぐこともできる裏に蹴ることもできる、両方の可能性を持っているので相手チームは対応に迫られます。これもトリニータの強みの1つと言って良いでしょう。

と、ここで2つ紹介させてもらいましたが、長くなりすぎるのも嫌なので一度ここで研究①は終了です。