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トリニータの戦術を研究②

こんにちは。今日はトリニータの戦術の続きを書きたいと思います。①前回は2シャドーとワントップのスタメンが固定されていないこと、②トリニータのビルドアップについて述べました。今回は③、④を説明したいと思います。

③忠実に再現された5レーン理論のプレー

一度は試合を見たことは分かると思いますが、トリニータのビルドアップ、パス回しはとても安定していますよね。その理由としては②で説明しましたが、もう一つ大きな理由があると私は思っています。みなさんは5レーン理論という言葉をご存知でしょうか?一度は聞いたことがある方もいると思います。

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このようにピッチを横ではなく縦5分割に分け、両サイド大外のレーンをアウトサイドレーンと呼び、5分割のちょうど真ん中をセンターレーンと呼びます。そしてアウトサイドレーンセンターレーンの間にある2つのレーンをハーフスペースと言います。現代サッカーでは、この5レーン理論が点を取るためには欠かせないものになっています。なぜならこの理論は、ポジショナルプレーを実践するときに大きな手助けになるからです。(ポジショナルプレーのことを話すと長くなってしまうので次の機会に)5レーン理論を試合中に実践するには大きなルールが4つあります。

  1. 一列前の選手は、同じレーンに入ってはいけない
  2. 二列前の選手は同じレーンに入る
  3. 一列前の選手は、隣のレーンにいる
  4. 同じレーンに2人以上入らないのが望ましい

画像で説明すると、アンカーのフェルナンジーニョ選手の一列前の選手はシルバ選手、デ・ブライネ選手になります。その2選手はフェルナンジーニョ選手と同じレーンに入らず、ハーフスペースに位置しています。これがルール1です。そして二列前の選手はアグエロ選手ですが、アグエロ選手フェルナンジーニョ選手と同じレーンに位置しています。これがルール2です。そしてシルバ選手デ・ブライネ選手は、センターレーン横のハーフスペースに位置しています。これがルール3です。そしてそれぞれのレーンに選手が2人ずつ入っており、2人以上入っていません。非常にバランスのとれた配置になっています。これがルール4です。そして攻撃時には各レーンに選手が必ずいるのが理想です。

一列前の選手が横のレーンに位置し斜めのパスコースを確保すると同時に、二列前の選手は同じレーンに位置します。要するに三角形(トライアングル)の位置関係になることが想像できるでしょうか?

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トリニータの右サイドで表すとこのようになります。簡単に言うと、この5レーン理論のルールを意識すれば試合中に、トライアングルの関係を適切な距離関係で作ることができると言うことです。さらに選手間の距離感、バランスも非常に良くなります。例えばサイドを崩してクロスを上げるものの、中に誰も人がいないなんてことが起きる可能性も少なくなります。バランスよくポジションを配置しているので、5レーン理論が徹底されていて、各レーンに選手がいれば必ず何人かのプレーヤーがクロスに飛び込めるはずです。そのために、各レーンにプレーヤーがいることが望ましいです。そしてトリニータの選手たちもこの5レーン理論の考えが浸透されているため、ビルドアップに迷いがなくスムーズです。研究①でCBの岩田選手、福森選手がビルドアップ時にSBのような位置付けになりますが、あまりワイドに取らないと述べましたが、これが理由です。松本選手、星選手(今年で言うと高山選手)岩田選手、福森選手の一列前の選手になるのですが、彼らはアウトサイドレーンに位置しています。そのために岩田選手、福森選手はワイドに取らず、ハーフスペースに位置し、アウトサイドレーンへの斜めのパスコースを確保します。単純な縦パスを受ける時は背中を後ろに向けてしまいますが、斜めのパスは体を半開きにし、視野を確保できます。だからトライアングルの関係が重要です。視野を確保できればボールを奪われるリスクも減るはずです。

しかし岩田選手、福森選手はずっとハーフスペースで、WBの選手はずっとアウトサイドレーンでプレーしないといけないわけではありません。5レーン理論というのはプレー原則」です。対戦相手がブロックを敷いて守備をしてきたときに、トリニータはより攻撃的になる必要があります。人数をより多くして攻撃するのですがそのとき岩田選手、福森選手も攻撃参加します。今シーズンのホームでの対広島戦でもよく見られたのですが岩田選手、福森選手が前目のポジションをとり尚且つアウトサイドレーンに位置します。すると高山選手、松本選手はスルスルっとハーフスペースに移動します。そして岩田選手、福森選手がいたハーフスペースの位置にボランチ前田選手、ティティパン選手が降りてくるか、鈴木選手がハーフスペースに移動します。この状況だと、ボランチの選手の一列前が岩田選手、福森選手になり二列前の選手が高山選手、松本選手になるわけです。

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ですので、プレーするときに誰がどのレーンでプレーするのかが必ずしも決まっているわけではありません。自分にとって一列前の選手と一列後ろの選手がどのレーンでプレーしてるのかによってポジションがある程度決まります。そのため選手が流動的に動いて、ポジションが変わっても全員が変わらぬサッカーをできるのではないでしょうか。そしてトライアングルの関係性を試合中に距離感よく作れているからこそ、敵のプレッシャーラインを超え前線に良い状態でボールを送ることができるのだと思います。ボールを保持して攻撃したい時は、トライアングルの関係性は必要になってきます。何より片野坂監督体制四年前です。監督の考えもかなり浸透されていると感じます。スタメンの岩田選手、鈴木選手、福森選手、松本選手やシャドーの後藤選手、CFの伊佐選手などは片野坂監督体制1年目からプレーしてます。④ではさらに5レーン理論のメリットを紹介します。

 

④位置的優位、数的優位、質的優位(攻撃の鍵はサイド)

この3つはポジショナルプレーの原則となるものです。そしてこの原則は5レーン理論と密接に関わっています。

  1. 位置的優位

③の冒頭で5レーン理論が点を取るために重要になると述べました。その1つの理由が位置的優位です。これは特にハーフスペースに入り込みボールを受けようとするとき位置的優位が発生します。

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この画像のようにハーフスペースに入り込みボールを受けます。青の矢印がボールの動きで、赤の矢印がDFの動きです。ハーフスペースに位置すれば、ボールを触らなくとも相手選手は嫌がるはずです。なぜならどの選手がマークにつくか迷いが生じるからです。もし8番がパスコースを消しに行きスライドしたら、次はワントップへの縦パスのコースが空いてしまいます。赤の7番、6番がスライドで対応はできますがかなりきつい仕事になりますね。

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次に赤のSB5番がマークしに行くとどうなるでしょうか?自分の守備ゾーンを空けてしまい、サイドに広大なスペースができてしまいます。そこのスペースを有効に使われてしまいます。

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最後に赤のCB4番がマークしに行くとどうなるでしょうか?最終ラインが3枚になり、残りの3枚はカバーリングをする必要があります。もしカバーしなければ、4番が飛び出したギャップのスペースを使われてしまいます。

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このようにハーフスペースに位置することによって、相手を意図的に動かすことができます。トリニータで言うと、2シャドーはハーフスペースによく入り込みます。CFは最終ラインを引っ張り、相手のDFラインとMFラインのライン間を広げます。こうすることによって2シャドーは、ボールが入った時のスペースを確保でき前を向けます。そこで前を向ければ一気にビックチャンスです。DFは何らかの対応を迫られます。ミドルも打てますし、スルーパスも出せます。だから、ビルドアップのときにハーフスペースに位置し、後方から斜めでスパンと強い縦パスが入り前を向けた時は、点を取るチャンスがぐっと上がります。もしCFが降りてきた場合は2シャドーのどちらかが裏を狙いDFラインを押し下げます。

 2.数的優位

数的優位は研究①で述べた通り、トリニータはビルドアップ時に近い距離でGKも含めビルドアップをします。そしてボランチが一枚降りてくるなどしてビルドアップ時に数的優位を作ります。決して数的不利の状況で後方のビルドアップはしません。もし後方で数的不利の状況になっていたらそれは、前方で数的優位になっている可能性があるので、トリニータの選手たちは前線にボールを送るでしょう。攻撃する時、ボールを持っている時は数的優位を作るのが絶対条件であり、数的優位ができているところで攻撃をします。

 3.質的優位

質的優位とは個の能力で相手を上回ることです。シティで例を出すとスターリング選手、レロイ・サネ選手です。彼らはとにかく速く一対一に滅法強いです。ペップは戦術の役割は彼らに良い状態でボールを届けて終わりだと言っていたらしいです。良い状況でボールが彼らに渡ればかなりの確率でチャンスに繋がります。トリニータの選手の場合は松本選手、高山選手、星選手、小林選手あたりになってくると思います。彼らはアウトサイドレーンでプレーしているのですがドリブル、スピードに特徴を持った選手です。私は彼らがトリニータの攻撃の鍵を握っていると思っています。パス回しだけでは、ブロックを敷いた守備を崩すのは限界があります。しかしドリブラーがいれば局面を打開することができるし、変化をつけることができます。ではどのようにトリニータはどのように質的優位の状況を作り出しているのでしょうか?答えはアイソレーション(孤立)です。これはバスケでよく使われる言葉です。わざと一対一の局面を作り出し、そこで一対一に勝ちチャンスを作ることです。このアイソレーションはアウトサイドレーンで使います。一方のサイドで密集を作り一気に逆サイドに展開します。そこで一対一の状況から勝負するわけです。そこからさらにパスで崩すようでは時間がかかってしまいますが、一対一の勝負に勝ちゴール前でクロスを上げるのはかなりのチャンスになります。完全にパスで崩しきる必要もないです。そして彼らに必要なのは味方が近くに寄ってヘルプするよりも、スペースが必要です。彼らがアウトサイドレーンで良い状況でボールを受けた時は、個の力を存分に発揮させるため同じレーンには入りません。なぜなら近くに寄ることで、マークを引き連れてきてしまい、スペースが無くなってしまうからです。その時のアウトサイドレーンは彼らにとって神聖な場所みたいなものです。決して邪魔してはいけません。良い状況でパスを受けた時とは具体的に言えば、ピッチを3分割にしたときの1番奥、アタッキングゾーンで前を向いてボールを受けたときです。マリノス戦のデータなのですが、90分を通して左サイドで31%、中央で25%、右サイドで44%の割合で攻めています。右サイドで攻撃する傾向が強いですね。この試合で松本選手は6本のクロスを送り、2本成功(1アシスト)です。さらに松本選手をアンダーラップで追い越し岩田選手が3本クロスを送り、2本成功(1アシスト)しています。右サイドは、CBの岩田選手が積極的な上がりを見せます。松本選手を外側から追い越すのではなく、内側(アンダーラップ)から追い越し、ペナルティーエリアのポケットの位置でボールをもらいます。特に右サイドは驚異的です。

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(黄色が岩田選手の動き、赤がポケットゾーン、青がボールの動き)相手SBを引き出すことに成功すればそのSBとCBの間できたスペースに岩田選手が猛スピードで走りクロスを上げます。

そしてクロスを上げる時は必ずゴール前に2.3枚、多い時は4枚クロスを待っているので、サイド攻撃が鍵だと選手は理解しているのがわかります。そしてマリノス戦では2本のクロスから点を挙げています。サイド攻撃はトリニータの大きな武器です。

これは完全な私の意見ですが、片野坂監督体制になって松本怜選手が1番選手として伸びたと思っています。(上からですみません)その理由として彼に無理難題なタスクをこなさせるのではなく、彼が1番得意としてる場所でプレーさせているからでしょう。彼にゲームメイクをしろと指示しても到底無理です。彼には彼の個性があり片野坂監督は彼の個性を理解してるからこそ、WBで起用しています。そしてクロス精度も年々向上しています。スピード系のクロスをキーパーとDFラインの間に正確に送ることができ、何度もチャンスを作っています。松本選手が怪我などで出場できないとなると、正直怖いです。トリニータでは代えのきかない選手です。こうして位置的優位、数的優位、質的優位トリニータの攻撃には欠かせないものだと私は考えています。この3つの優位をトリニータが作ることができるので、チームとして優れた得点力を持っているのだと思います。

今回は③忠実に再現された5レーン理論.④位置的優位、数的優位、質的優位(サイド攻撃が鍵)の2つについて述べました。自分で文章を考え、説明することが如何に難しいかを痛感しています。決して最高なまとめではないですし、ミスというかうまく伝わらないことの方が多いと思います。しかし自分で挑戦してみたかったことなので、最後までお付き合いしてくれると嬉しいです。次回で終わりか、あと2回になると思います。

 

https://trinitaoita.hatenablog.com/entry/2019/04/02/154746 

↑研究①です。